なぜピロリ菌除菌が胃がんに有効なのか?
こんにちは弘邦医院院長の林雅之です。本日のテーマは「ピロリ菌と胃がんの関係」についてです。
皆さんのなかには「白い巨塔」という小説をご存じの方も多いでしょう。有名作家の山崎豊子さんの作品です。1960年代の作品で、大学病院の閉鎖的な世界を描いた小説です。主人公の天才外科医・財前五郎は自分の専門である胃がんにより亡くなるのですが、当時の胃がんは不治の病の代表でした。しかし、胃がんの多くがピロリ菌の感染が原因であり、そのピロリ菌を除菌すれば胃がんを予防したり、治したりできることが1980年代以降わかってきました。
通常、胃のなかは強い胃酸により細菌は生きられません。しかし、ピロリ菌は胃の中に住み続けられる稀有な細菌です。
ではピロリ菌はどのようにして胃がんを作るのでしょうか? ピロリ菌の表面には小さな注射針のようなトゲがあり、それを胃の細胞に突き刺してCagAと呼ばれる発がん性のたんぱく質を送り込みます。CagAに細胞内でリン酸が結合すると、細胞増殖を促す酵素と結びつき、細胞が異常に活性化してがんができるのです。
ピロリ菌は欧米人も感染しているのですが、日本を含むアジア型のピロリ菌は欧米型に比べて強力なためにがんを発症しやすいことが分かっています。
つまり、ピロリ菌の除菌は治療だけでなく予防としても有効だということです。
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