台風後に気をつけたい感染症
こんにちは、弘邦医院院長の林雅之です。本日のテーマは「台風後の感染症」です。100年に1度と評される、台風10号が話題です。被害が出ないことを心からお祈りしますが、残念ながら少なからぬ被害が予想されます。台風や洪水、地震などの被災地では被災後1週間ほどしてから感染症の増加がみられますので、そのことをお話したいと思います。
2018年7月の豪雨後、岡山県ではレジオネラ肺炎の報告が増えています。レジオネラ菌と呼ばれる菌は普段は河川や湿った土壌に生息する菌ですが、洪水などで街中に濁流として流れてきて、汚染された雨水と一緒に飲んでしまったり、粉塵(土埃)と共にレジオネラ菌を吸引することによって起こる肺炎です。全身性倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛等に始まり、乾いた咳や、高熱、悪寒、胸痛がみられるようになります。やがて傾眠、昏睡、幻覚、四肢の振せんなどの中枢神経系の症状がでます。症状が早く、重症化する恐れのある感染症です。
また2004年には愛媛県、2005年には宮崎県、2011年には三重県で台風とそれに伴う洪水の後にレプトスピラ症患者が発生しています。レプトスピラ症は発熱、眼球結膜充血、全身の筋肉痛などを特徴とする感染症で、ネズミなどの野生動物を自然宿主としてヒトだけでなく、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、など哺乳類のほとんどに感染します。腎臓尿細管などで増殖して排泄物を経由して汚染された土壌や水を介して口や皮膚から侵入するのです。
いずれにせよ、被災地では食事はなるべく火の通ったものを口にして、水は安心して飲める水をきれいなコップで飲むことが大切です。もちろん、食事前の手洗い、トイレ後の手洗いは徹底しましょう。また、水が引いた後の後かたずけの際は必ず手袋、マスクを装着して行うことです。